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「さて、今日君たちに試してもらうのは、この〝ねんねこイヤー〟だが」  博士は猫耳カチューシャを何本か取り出した。その横を、セミロングの女性が素知らぬ顔で通り抜けようとしたが、肩を掴まれる。 「な、何か」 「鈴井君。残業は嫌いかな」 「好きな人はあまりいないと思いますが」  彼女は鈴井茜さん。このラボで働くわたしの先輩で、新しい発明品の可能性を引き出すことにかけては右に出るものはいない。 「どうだ、実験に協力すれば、特別手当を出すが」 「その手には乗りませんよ。蓄えなら結構あるんですから」 「給料一ヶ月分でどうだ」 「それで、わたしは何を」  鈴井さんの変わり身の早さは相変わらずだ。博士はカチューシャを鈴井さんの頭に着けると、わたしと理絵にも同じものを差し出した。 「今から君たちには、現実と虚構の(はざま)へ旅立ってもらう。特別室へ案内しよう。ついて来てくれ」  猫耳をつけたわたしたち三人は、博士に連れられ、地下へと降りていった。
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