(2)

1/12
前へ
/93ページ
次へ

(2)

 地下に広がる巨大な開発室を抜けてスロープを下ると、学校のようにたくさんの部屋が並ぶ廊下に出る。それぞれ目的に応じた設備が用意された特別室だ。  博士は〝松の間〟と書かれた部屋にわたしたちを案内した。 「旅館じゃん」  部屋に入るなり、鈴井さんが突っ込んだ。わりと広めの和室に、布団が三組並べて敷いてある。 「君たちには、ここで眠ってもらう」 「言い方が微妙に怖いです、博士」  鈴井さんのツッコミラッシュを華麗にスルーして、博士は部屋の奥の鏡台前に腰掛けた。 「さあ、どの布団で寝るかは早い者勝ちだ」 「いやいや、修学旅行じゃあるまいし」 「じゃあわたしは端っこで」 「わたしも」  わたしと理絵が素早く両端に陣取ると、鈴井さんが呆然と立ち尽くした。 「鈴井さん、いびきなんて気にしなくていいですから」 「いっ、いびきなんてかかないしっ」  お手本のような反応をする鈴井さんが可愛い。八つも年上だが、なんだか理絵とはまた違ったイジりがいがある。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加