9人が本棚に入れています
本棚に追加
柊丈一郎の不覚
漸く標的を狙える場所を得ることができた。俺は標的が家から出てくるのを待ち侘びた。
弾丸が込められたカメラを持って集中した。標的の議員が出てきた。深呼吸をして標的の動きを観察した。標的と照準が合った。心の中で声がした。今だ、やれ。
その時だった。背後から聞いたことのある声が聞こえた。百戦錬磨の俺が動揺して手元が狂った。
弾丸は桜の大木に命中してめり込んだ。男はぽかんとしていたが、やがて正気に戻ると警察に通報した。
俺は男を睨みながら、その場所を早急に去った。なんで花見に一番いい場所にブルーシートを敷いていた男がここにいるのだろうか。
俺は疑問の渦に飲み込まれながら、暗殺に失敗したことを深く悔やんだ。俺は花見をする人間が酷く嫌いになった。
最初のコメントを投稿しよう!