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杉並洋一の花見
お花見の場所取りのために公園にブルーシートを敷いた。この公園では特に三箇所の地点から綺麗な桜を観ることができる。
季節は桜が舞い散る春。綺麗な桜並木の裏手には閑静な住宅街があった。
三箇所の中でも最もいい場所を取ることができた。僕は桜みたいにみんなの前で堂々とカッコよく見えるようになりたい。波風立たない平凡な人生を送ってきたけど、何かないかなと常々思っていた。
ブルーシートの上に荷物を置いて少し出かけた。早朝の公園はまだ人がとても少ないので、出かけても大丈夫だろうと思っていた。
帰ってくると体格の良い男が苦い顔をしていた。花見の場所なら他にもあるのに、どうしたのだろうか。男は小型のカメラを持っていた。顔をよく見ると精悍なイケメンだった。
僕は、腕を組んで悩んでいる男性に話しかけた。
「こんにちは。どうしたんですか?」
男が眉間に皺を寄せて、僕に話しかけた。
「花見の場所取り、ここ以外はダメなのか? 他の場所にしてくれないか?」
僕は二人の横に綺麗に舞い誇る一本の桜を指差した。
「いや、この桜の前がいいんです。あなたの方こそ、他の場所ではダメなのですか?」
男は顔を険しくして、考え込んでいた。
「わかった。他を当たろう」
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