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竹下慎二の仕事
今年も綺麗な桜が咲いて良かった。僕は桜を撮る場所を決めていた。毎年この位置から取ると綺麗なんだよな。
僕はテレビ局の依頼でカメラを撮るプロのカメラマンだ。三時間ほど録画して使われるのはたった二分。
でもこれも立派な仕事なんだ。僕が三脚を立ててカメラを構えていると、屈強な男に声をかけられた。カメラを持っていたので、この人は花見客なのだろう。
「おい。この場所じゃなくて、違う場所で桜を撮ってくれないか?」
男は顔に傷があって、とても常人とは思えないほどの凄みがあった。
「ごめんなさい。テレビ局の取材で、ここからじゃないとダメなんです」
「いや、頼む。空けてくれないか?」
男の迫力ある剣幕に思わず首を縦に振ろうとした。とても怖い顔つきだけどイケメンだった。しかし仕事のためにこの場所は譲れない。
「本当にごめんなさい。それはできません」
「わかった。仕方ない」
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