柊丈一郎の願望

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柊丈一郎の願望

 俺は桜並木の裏側の邸宅に住んでいる衆議院議員の暗殺を依頼されていた。俺が所属する組織の秘密を握っている議員が邪魔らしい。桜の枝葉に隠れて狙撃する簡単な依頼だった。  銃の見た目は普通のカメラと寸分狂いない物だが、標的に照準を合わせてシャッターを切ると弾丸が発射される仕組みだ。  俺は殺し屋として裏世界では有名だった。俺に殺せない奴はいない。しかし今回は狙撃場所が最重要項目だった。公園から狙える場所は桜が綺麗に咲いている三箇所しかなかった。絶好の花見場所と絶好の狙撃場所が偶然にも被っていた。  公園内で最も桜が綺麗な場所にいた人物に話しかけると花見の場所取りで譲れないと言ってきた。  仕事の前に揉めると怪しまれる可能性がある。他の場所を当たった。すると今度はテレビ局の取材をしている奴がいた。  テレビ局の連中と揉めるとそれは非常にまずいことになる。注目を浴びたくない俺はテレビ局とは正反対に位置している。  最後の三箇所目に俺は期待した。細身の女性がストレッチをしていた。俺はまた断られるだろうと思って話しかけると何故か場所を譲ってくれた。  連絡先を聞かれたのは意味がわからなかったが、架空の名前と電話番号を伝えておいた。そろそろ標的の議員が出てくる頃だ。俺はカメラを持つ手に力を込めた。
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