柊丈一郎の不覚

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柊丈一郎の不覚

 漸く標的を狙える場所を得ることができた。俺は標的が家から出てくるのを待ち侘びた。  弾丸が込められたカメラを持って集中した。標的の議員が出てきた。深呼吸をして標的の動きを観察した。標的と照準が合った。心の中で声がした。今だ、やれ。  その時だった。背後から聞いたことのある声が聞こえた。百戦錬磨の俺が動揺して手元が狂った。  弾丸は桜の大木に命中してめり込んだ。男はぽかんとしていたが、やがて正気に戻ると警察に通報した。  俺は男を睨みながら、その場所を早急に去った。なんで花見に一番いい場所にブルーシートを敷いていた男がここにいるのだろうか。  俺は疑問の渦に飲み込まれながら、暗殺に失敗したことを深く悔やんだ。俺は花見をする人間が酷く嫌いになった。
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