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 翌日、目を覚ますと既に日は高く昇っていて、僕はそのまま学校をサボった。そして夕刻にチャイムを鳴らした相手を見て、咄嗟に言葉がでなかった。 「お腹空いたー!」  そう言いながら未玖はいつもの通り勝手に部屋へ入ってくる。ずかずかと廊下を通り、手にしていたビニール袋を座卓に置き、「今日、カレー作ってよ」なんて言う。まるで昨日の気まずさなどなかったような様子で。  彼女は強い。僕なんか足元にも及ばないほど。 「なんかさー、もうよくなっちゃった。私なんかが告白したところで、フラれるに決まってるし」  ビニール袋には、カレーのルウと牛肉、人参、ジャガイモ、玉葱がごろごろと入っていた。彼女はそれらを取り出して座卓に並べる。 「ごめん、僕が余計なこと言ったから」 「後押ししてほしかったんだよ、きっと、私。耳障りの良い言葉だけほしかったんだ。だからあんなに怒っちゃった。はー、まったく、自分勝手だよね」  人参を片手に持ち、未玖はにっと笑ってみせる。 「だからさ、仲直りにカレー作る。一緒にね。今日は冬哉が材料費の五百円払ってよ?」  僕に異論などあるはずがない。 「ほんとに未玖は強いな」  頷いた僕の口からぽろりと言葉が零れた。それはなかなか口にできずにいる、彼女への賛辞だった。 「んー。そうでもない」  少し迷った風を見せ、未玖は材料を抱える。 「私、壊れないものを選んでたんだ」  僕がその意味を聞き返す前に彼女はさっさとキッチンに立ち、僕に芋洗いを命じる。昨晩風呂に入ってないことを気にしつつ、僕は慌てて予備のエプロンを戸棚から引っ張り出した。
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