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これからアーカムは針の筵に座るような地獄を味わうことになるだろう。
何しろあれだけの目撃者がいるのだ。しかも目撃者の半数以上が力ある大貴族たち。醜聞はあっという間に広がり、フォニス家は爪弾きにされ、社交界での居場所を失うのが目に見えている。
「まあウィルフレッドのためでもあったけどさ。自分のためでもあるよ。真の黒幕が無罪じゃ腹の虫がおさまらねえよ。アンバーがいなきゃ、おれはお前を失っていたかもしれなかったんだぞ?」
イスカはティーカップを置いて手を伸ばし、リナリアの頬に触れた。どきりと胸が鳴る。
「そ、そうですね。アンバーには感謝しないといけませんね」
「……。俺は退室したほうが良いでしょうかね? 俺も結構、いや、父上に負けないくらい滅茶苦茶頑張ったんですけどね。ねぎらいの言葉一つなしですか、そうですか……」
はっとして前を見れば、イザークは半眼になっている。
「悪い。イザークには本当に世話になった。おれのために奔走してくれてありがとう」
イスカは姿勢を正して頭を下げた。
「はい。いましがた存在を綺麗さっぱり忘れ去られていたことは水に流します」
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