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しかし、茂みの前で二本足で立ち、傾聴の姿勢を取っているアルルの姿を見て、そのまま最後まで歌いきることにした。
やがて歌が終わると、アルルが駆け寄ってきた。
つぶらな蒼い瞳でリナリアを見上げ、口に咥えていた花を両手で――正確には両前足で――持ち、どうぞ、というように背伸びして差し出してくる。
(かーわーいーいー!!)
一週間ぶりに見るアルルの姿は相変わらず悶えたくなるほどに可愛かった。
人間に花を贈る魔物など、世界中を探してもアルルしかいないのではないだろうか。
「ありがとう」
リナリアは微笑んで花を受け取った。
特別な花ではない。
どこにでも生えている雑草で、ここまでに来る道中でも何度か見かけた。
それでも、自分に贈られたこの花にはかけがえのない喜びと価値があった。
花を渡し終えた後も、アルルは蒼穹のような青い目で、じっとリナリアを見つめている。
どうして一週間も来なかったの?
そう言っているような気がして、リナリアは説明を始めた。
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