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デイジーは潤んだ瞳でリナリアを見上げたものの、何も言わずにふらりと立ち上がった。
婚約者を亡くしたショックが抜けきらないらしく、歩き出したときはふらふらと危なっかしく身体を左右に揺らしていたものの、テオドシウスの元に辿り着く頃にはきちんと歩けるようになっていた。
「国王様。お尋ねしたいことがございます」
「何だ。いま余は頭が痛い。あまりのことに何も考えられないのだ」
テオドシウスは顔をしかめている。
「お察し致します。私も婚約者であるウィルフレッド様が亡くなってしまい、頭も胸も痛いですわ。ウィルフレッド様は亡くなり、セレン様は気が触れてしまいました。たとえ正気を取り戻したとしても、異母弟を殺害したセレン様では王太子にはなれませんよね。では、誰が次の王太子になるのでしょうか?」
貴族たちのざわめきの種類が変わった。たったいま、目の前で第一王子が第二王子を殺害するという大事件が起きたというのに、こいつは何を言っているのか。そんな困惑が広がっていく。
「何を言い出すのだデイジー!! お前はいまどういう状況かわかっているのか!?」
アーカムが血相を変えて叫んだ。
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