それはまるで夢のように

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「あら、クロエ。どうしてここにいるの。部屋に戻りなさい。大勢の人が集まる場には出てこないように言いつけたでしょう。あなたの風貌を見て、皆が怯えているのがわからない? 察してもらわないと困るわ」  デイジーは眉をハの字にし、本当に困ったような表情を浮かべた。 「……ふふ……」  クロエは小さな笑い声を上げた。まるで、泣いているような笑顔だった。 「そうですね……あなたはいつもそう言うんです。具体的な指示は決してせず、あなたを慕う人の前で、ただ、困る、嫌だ、と……心底悲しそうに、肩を震わせ、涙を浮かべ……憐憫を誘うような表情を作り、大げさに嘆いてみせるのです。そうしてあなたはあなたに心酔している人々を操った。メノンがリナリア様を殺すよう仕向けたんです」  クロエの発言に貴族たちがどよめいた。  あの侍女はいま何と言った。どういうことだ。 「いきなり現れたと思ったら、何を言い出すの? 私にはあなたが何を言っているのかわからないわ」  デイジーは困惑顔のまま首を傾げた。形の良い耳に下げた涙滴型の耳飾りが陽光を反射してきらりと輝く。
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