279人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、なんて恐ろしいことを言うの? 私がセレン様を襲わせる? 一体何の話? さっぱりわからないわ」
デイジーは眉を顰めたがクロエは無言。ただひたすら己を見つめるクロエを見返して、デイジーはため息をついた。
「……そう。そんなに私を悪者にしたいのね。悲しいけれど、私に至らぬところがあったのでしょう。あなたの不満と妄想には後で思う存分付き合ってあげるから、いまはとにかく口を閉じてちょうだい。王宮にあなたを連れてきたことを後悔させないで。お願いよ。このままでは私、あなたを罰しなくてはならなくなってしまうわ」
デイジーは哀願するようにそう言ったが、やはりクロエの表情は冷ややかだった。
「妄想では済まないのですよ……メノンは死んだのです。あなたを愛し、焦がれ……あなたに一秒でも長く微笑んでほしくて……恋の奴隷となって死んだのに……このままではあまりにも彼が報われません……彼の友人として、私はあなたを糾弾します、デイジー様」
「糾弾ですって? 私は何もしていないのに? 私に一体どんな罪があると言うの?」
駄々をこねる幼児を眺める母親のように、デイジーは微苦笑を浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!