それはまるで夢のように

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「王妃となれと……幼少から父親に強要されたせいでしょうが……あなたは『誰よりも美しく光り輝き、誰よりも愛されたい』という強烈な願望を抱いている……そうでなければ自分には価値がないと思っている節すらあります。あなたは《光の樹》を蘇らせた聖女として……リナリア様が自分よりも注目されることが許せなかった。他人は常に自分だけを見つめ、自分だけを賛美し、自分を気持ち良くさせてくれる存在でなければならないのに……誰もが自分ではなくリナリア様を褒め称える……その状況に我慢ならなかった。万人に恵みをもたらす《光の樹》も聖女も……あなたにとっては不要どころか害悪です。そこで、あなたは金に困っている庭師に《光の樹》の芽を摘ませ、メノンにリナリア様を殺害させようとした……それが事件の真相です」  いつの間にか、中庭は水を打ったように静かになっていた。  この先《光の樹》が生み出すであろう莫大な富も国益も興味がない。  魔法が使えなくなろうが神の怒りを買おうがどうでも良い。  誰が困ろうと嘆こうと知ったことではない。  デイジーはただ注目されたいという、ごく個人的な理由で国の宝である《光の樹》と聖女を排除しようとした。  あまりにも異様な話に、全員が言葉を失って立ち尽くす。 《光の樹》の喪失により問題が生じた場合は誰かが何とかしてくれる――デイジーはそう信じているのだろう。何故なら困ったときには誰かが助けてくれる、それがデイジーの『当たり前』であり、『日常』なのだから。
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