それはまるで夢のように

14/18
前へ
/277ページ
次へ
「――ああ、そうだね。君に悪意はなく、君は真実何もしていない。罪に問うことができるのはシーラやメノンといった実行犯だけだ」  声が聞こえた。ウィルフレッドの声だ。  貴族たちがどよめいた。右手から、死んだはずのウィルフレッドが歩いてくる。  第一王子セレン――彼に扮しているイスカと共に。 「ウィルフレッド様!?」 「生きておられたのか!?」 「これはどういうことなのですか、セレン王子殿下!」 「すまない」  イスカは真摯に頭を下げた。 「先日の聖女襲撃事件を受けて、私はこのところ、騎士たちと王宮を調査していた。過去にさかのぼってデイジーのために罪を犯したものを捕らえ、牢に入れてもなお、彼らは皆デイジーを庇い、デイジーを讃えるようなことを言う。このまま放置していては誰も彼女の本質に気づかず、信奉者は増えるばかりだっただろう。そこで無理を言って陛下にこの場を設けていただき、ひと芝居打たせてもらった。全てはデイジーの異常性をその目で確認してもらい、ここにいる皆に証人となってもらうためだ。謗りは後でいくらでも受けよう」 「…………」  さすがに頭を下げられては何も言えなくなったらしい。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加