それはまるで夢のように

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「どうか……一つだけ……お礼を言わせてください。十年前の夜……あなたが私を助けてくださったのは……祭りのために大勢集まっていた人々に対する……ただのパフォーマンスであり、アピールでしかなかったのでしょうけれど……それでも……燃え盛る炎の中で……瀕死の私を抱き上げ……優しく微笑んでくださったあなたは……本当に……本当に……夢のように、美しかった……朦朧とした意識の中で……私はこの世で最も美しいものを見ました……助けてくださって、ありがとうございました」 「そう」  デイジーの答えはそっけなかった。 「恩を仇で返してくれてありがとう。二度とその醜い顔を私に見せないで」  氷の声音で告げて、デイジーはアーカムと去った。  クロエは頭を下げたまま何も言わなかったが、雫が一つ、地面に落ちて弾けた。  残された貴族たちはざわざわと騒ぎ、ウィルフレッドは心底疲れたようにため息をついた。
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