279人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで。事件は解決したように思えますが、まだ一つ大きな謎が残っていますよね。結局、誰がイスカ様を魔物に変えて森へ追放したのでしょうか。クロエはこの国にもう一人王子がいることを知らないようでしたし、デイジーもイスカ様のことについては全く触れませんでした。犯人はきっとデイジーではありません」
あの後、デイジーに捨てられたクロエはヴィネッタが公爵邸に連れ帰ることになった。
魂が抜けたような顔でぼうっと突っ立っていたクロエはヴィネッタの申し出に驚き、困惑していたが、結局「お世話になります」と頭を下げた。
ヴィネッタが面倒を見てくれると言うのなら安心だ。
公爵邸は春の陽だまりのように温かい。顔に傷跡があるからとクロエを気味悪がったり、意地悪をするような人間など一人もいないと断言できる。
「ああ、そういえば、誰の仕業なんだろうな。エルザの推測通りロアンヌだったのか、違うのか……気にはなるが、おれは正直、もうどうでも良いかなと思い始めてる」
最初のコメントを投稿しよう!