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「ご安心ください、肩までしっかり浸かられているからその玉体は見えていません、っていうかそんなことより大変なんです!! さっき王都から湯治のためにはるばるやってきたっていうおじいさんに聞いたんですけど、《花冠の聖女》が見つかったそうですよ!! しかも彼女、リナリア様っていうらしいんですけど、リナリア様は《光の樹》を蘇らせることに成功し、民衆から救国の聖女と讃えられているそうです!!」
「おやまあ」
「おやまあじゃないですよ! 私たちがあちこちふらふらしている間に王宮に先を越されてしまったじゃないですか! これじゃ私たち、フルーベル各地の郷土料理や特産品を美味しく食しながら呑気に観光してただけじゃないですか!!」
「残念ながらそういうことになってしまうな。しかし、楽しかったと思わないか? 美しい景色を見て、厳選食材に舌鼓を打つ。身も心も大いに癒される素晴らしい旅だった。おかげで蓄積していた日頃のストレスが吹き飛んだよ。いやあ、大勢の信者たちに囲まれながら清廉潔白な聖女様ぶるのも大変で」
濡れた右手を持ち上げ、首筋に浮かぶ《光の花》を揉む。
「……イレーネ様?」
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