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乗車して最初の停車駅から数人の乗客が乗り込んできた。作業員風の初老の男性や会社帰りの女性客、熟年夫婦、それらに混じってワイワイとにぎやかに乗ってきたのは五人の少女たちだった。無邪気な声が無機質だった車内に華やかさをもたらす。
「あ――結構混んでるぅ」
「やっぱ夕方は座れないよねぇ」
彼女たちが着る速乾抗菌タイプのシャツは紺色の地に袖口と首回りの細い蛍光オレンジのボーダーがアクセントになっていた。汗はすっかり乾いているものの淡いデオドラントに混じって微かに少女特有の汗の匂いが無意識なくつろぎの隙を突くように香ってくる。
「でもさ、先輩のシュート、惜しかったよね」
「ね――」
彼女らはおそらく部活の試合の帰りであろう、その会話とスタイルからバスケットボール部員であろうことは明白だった。ボールが詰まったバッグに記された花弁をモチーフにしたマークの中心に「中」の文字があることから、この沿線のどこかにある中学校の生徒であることもわかる。紺色のシャツに同色の紺のバスケットボールパンツというそのスタイルは、まさに練習を終えて体育館から出て来たそのままの姿に見えた。
床に立てるように置いた大きなボールバッグを囲むようにして立つ五人が歓談している。そして彼女たちが動くたびに光沢のあるサテン地のパンツが車内の照明の白い光を反射させた。私は再生プレーヤーを止めるとヘッドフォンはそのままにすぐ目の前で円陣を組むように立つ彼女たちの会話に耳を傾けた。
しかしその内容はどうでもよかった。私にとっての興味は彼女たちがはしゃぐように動くたびにテカリテカリと光を反射させるそのサテン生地にあった。私は自分の心理状態を悟られることのないように注意しながら少しだけ顔を背けつつも、しかし彼女たちの無垢で無防備な光沢が常に視界に入るよう、自分の立ち位置や視線に気を遣いながら意識を集中させていた。
幾駅かを過ぎたときのこと、切り替えポイントのいたずらか、車両がぐらりと大きく揺れた。やけに楽し気な「キャ――」という嬌声とともに少女たちの身体が揺れる。そのときこちらに背を向けたひとりの少女のスマートフォンがするりと小さな手から滑り落ちた。しかしそれは幸いにも隣に立つ少女のスニーカーの甲の上で止まった。
「ごめ――ん、痛くなかった?」
「大丈夫、大丈夫、てか、よかったよね」
「ほんと、でも、ごめ――ん」
なんとなく間延びした緩い言葉とともにそれを拾おうと腕を伸ばす。その姿はほぼ前屈、その尻にピタッと張り付くサテンの光沢が私の目を奪う。未だ成長途上の体躯の割に、その臀部は思った以上の肉付きと張りだった。そしてサテン地の光沢がそのふくよかな曲線をなめらかな反射となって強調していた。
「なんか暑いよね。パンツのゴムってさ、ちょっと痒くならない?」
そう言って一人の少女がシャツの裾を少しだけたくし上げると、指を伸ばした両手をバスケットパンツの中に差し込む。シャツとパンツの紺色の隙間から少女の脇腹の白い肌がちらりと見えた。少女は何の恥じらいもなく無邪気にパンツの中でもぞもぞと手を動かしてはゴムに締め付けられた柔肌に開放感を与える。そしてその位置をずらすために少しだけたくし上げると膝までを覆い隠していたサテンの光沢の下から小さな膝頭が顔を見せた。
「おめ、ここ地下鉄ん中だよ、ヤバくね?」
ニヤつきながらツッコミを入れる向かいに立つ少女、「いっけねぇ」とつぶやきながら照れて赤くなった顔を隠すようにバッグの上につっぷす無邪気な少女。その体勢のおかげで今度はその少女の臀部が張りのある光沢に包まれる。そして私はいつの間にかそんな少女たちからすっかり目を離せなくなってしまっていた。
無垢で健康的、スリムでありながら部活で鍛えられた筋肉がついた下半身をさらりとした軽いサテン地がそれを包み込む。そして今度は目の前で別の少女がもうひとりの少女の尻を茶化すように撫でると、撫でられた少女は恥ずかしげにもぞもぞと下半身を身悶えさせた。
やがて少女たちは車中に飽きてきたのか、指でツンツンとお互いにつつき合いを始めた。つつかれるたびに身を避けては相手に反撃をする。そんなじゃれ合いを繰り返すと、身体の動きに合わせてサテンの光沢も乱反射を繰り返し、そして互いの下半身が触れ合い擦れ合う。今、目の前で繰り広げられているそれはまさに光沢の饗宴だった。
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