20章

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華が歌い終わるとみんな拍手をする。華の歌声は透き通っていて、優しくて、穏やかで、いつまでも聞いても飽きない。 「華めっちゃ歌上手いやん!」 「それな!えー、羨ましいー」 「愛美音痴だもんな」 「うっさい!」 「いやー、和也いい彼女いるもんだなー」 「あはは」 「ちょっと、2人とも!」 「ん?華どうしたの?」 「そろそろ着くよ?」 華の歌を聞いて、後からみんなでそうこう話していると、大きい施設の影の下僕たちはいることに気づいた。上を見上げると、大きくて太い英語の文字で『ウィズダム・メガプールセンター』と書いてあった。久しぶりに来たから、みんなで懐かしいなぁと呟いた。 時刻はちょうど10時。多少人はいるが、朝だからよほど混んでいない。受付で人数とチケットを買って、更衣室に移動する。黒い水着とラッシュガードを着て友樹と一緒に更衣室前で待った。 「おまたせー!待った?」 華の声で振り返る。黒のラッシュガードに白のラインが入っていて、黒のスカートタイプの水着を着た華。 似合っていて見とれていた。後から愛美もやってきてみんなでプールに入水した。最初は冷たくてみんな叫んでいたけど、水温にだいぶ慣れてみんなではしゃげるようになった。 「あ!なあなあ、あのスライダーやろうよ!二人一組らしいから、カップルペアで!」 「え!賛成!行こ!」 「華、行く?」 「うん!和也と一緒にね!」 華は俺の手を取ってスライダーに向かう階段を登り始めた。高さは相当高くて、高所恐怖症である友樹にとってはちょっとした拷問みたいなものらしい。 後ろに友樹と愛美がいるが、怖い怖いと叫ぶ友樹の声が凄く聞こえる。スライダーの入口に着くとアシスタントさんがフロートを持って俺達を誘導していた。俺が先頭に座って、後ろに華が座る。 だいぶ揺れるとアシスタントさんが言うと、華は俺に腕を回してぎゅっとひっつくように体制を整えた。プールの水で冷えた背中は華がくっついてるからかなんだか温もりを感じた。 「腕、離しちゃだめだよ?」 振り向いて小さな声で呟くと、華が頬を赤らめてコクリと小さく頷いた。この可愛さで俺はキュン死してしまいそうだった。 アシスタントさんが出発の合図をした。 「それでは、3,2,1,いってらっしゃーい!」 フロートが水で滑り始めて、徐々にスピードが上がる。トンネルの中に入ると、カラフルな壁が後ろに流れていく。トンネルを出る時に、滝のようなものがあって、下を通ると水日だしになった。 「はやいはやいー!」 「うわあああ」 急降下したからスピードはどんどん加速している。だけど楽しくて、恐怖が一気に消え去った。スライダーのゴール地点に着くと、スピードが一気に消えたからバシャバシャと水しぶきが俺達にかかった。 フロートを降りるとアシスタントさんがフロートを回収してくれた。 俺達がフロートから降りた数十秒後に友樹たちもやってきた。 「いやぁ、早すぎてびっくりしたよ!」 「ほんとそれ!華と和也の叫び声めっちゃ聞こえたよ」 「そういう愛美も叫んでたけどな」 「友樹もね!!」 波のプールに移動して浮き輪を使う。広大な波のプールには大きな波が押し寄せてくる。まるで海みたいに感じた。楽しそうに笑う華は誰よりも輝いているように見えた。 ー やっぱり華は、俺の自慢の大切な彼女だ! 波のプールを出て、お腹が空いたから売ってあったホットドッグとブルーハワイのソーダフロートを飲んだ。皆同じホットドッグを頼んで、友樹と華だけ違うドリンクだった。 友樹はメロンソーダフロートで、華はピーチといちごのソーダを頼んでいた。 ご飯を食べてしばらく休憩した。華が男女別れて行動しようと提案した。俺はその提案に賛成した。 が、本心では華と離れたくないと思った。でも、男女別の行動も案外楽しそうだなと思った。 「どんぐらい時間あればいい?」 「んー、1時間でいいと思うよ」 「みんな1時間で納得する?」 「全然する!!」 「おけ!じゃあ1時間後ここに集合ね!」 「うん!」 別れ際に俺は華に話しかけた。 「あれ、華。なんで来ないの?」 「あ、ごめん!ちょっと待って!和也、どうしたの?」 「気をつけてね」 「なにを?」 「溺れたりだよ」 「あー!はい!気をつけます!ありがと!」 華が頬にキスをして手を振って愛美の方へ向かって去った。俺も友樹のとこへ歩いた。 友樹がどうしたのかと聞いたから、華に溺れないように注意したことを伝えた。 「いやー、心配性だなぁ和也は。愛美は平気そうだからいいけど」 「気楽でいいな、お前は」 「ははっ、いいだろ」 友樹と笑いながらいろんなプールやスライダーで遊んだ。
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