勇者と魔王のお花見ウォーズ!

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勇者と魔王のお花見ウォーズ!

 その日。  勇者パーティを集めた、我らがリーダー(ジョブは剣士)の目は暗く濁っていた。 「諸君、これは重大なミッションだ」  ああ、これはやばい。  僕(白魔導士)は冷や汗をかく。彼がこんな風に言い出す時はろくなことがない。  前の時は“パチ●コで有り金全部使っちゃったので、武器を買うお金がなくなったごめん(てへぺろ)”という話だった。さすがにあの時は僕を含め仲間全員がブチギレでリンチの刑をお見舞いしたが。 「ちょっと、何よ大袈裟な。また金欠って言うんじゃないでしょうね?」  赤魔導士の彼女が、げんなりした顔で言う。その彼女と付き合っている恋人の格闘家が、うんうんと青ざめた顔で頷いていた。あの金欠騒動の悲劇をもう思い出したくないのだろう。最終的にはリーダーをボコるだけで済まず、宿を一つぶっ飛ばして借金を重ねることになったのだ。 「リーダー、今度賭け事やったらぶっ殺すってちゃんとお伝えしましたよね?」  冷静沈着な青年(召喚士)が冷ややかな目を向ける。なお、全開宿が吹っ飛んだのはこいつが召喚魔法をぶっぱなしたせい。勇者パーティの中で一番怒らせちゃやばい男だ。 「もう借金返すためにコンビニでバイトするの、あたし嫌ですう」  泣きそうな顔をしているのは踊り子の少女。コンビニに来た客にセクハラされまくって大変だったらしい。  まあ、彼女の場合、そのスッケスケの踊り子衣装のままで店員やってたのも問題だったとは思うが。なんで制服ちゃんと着なかったのか、タダで貸してくれたのに。 「ち、違う!みんな誤解だ!今回はちゃんと金はあるし、カジノにも行ってない!行ってないぞ!!」  全員の氷のような眼に気付いたのだろう。  リーダーは慌てたように告げたのだった。 「今回はそうじゃない!……みんな、ヨイザクラは好きだろう?もうすぐお花見シーズンだ、そうだろう!?お花見して宴会したいと言ってたじゃないか、なあ!」 「え?まあ……」 「そういうこと言いましたけど」 「だろ!?だから……」  ばんっ!とテーブルを叩いて言うリーダー。なお、ここは某町の宿。あまりにも派手にテーブルを叩きすぎて、なんかみしみしっと嫌な音がしたような気がするのは気のせいだと思いたい。もう弁償は嫌すぎる。 「このたび、お花見を決行するためのミッションを開始する!みんな、俺に力を貸してくれないか!」 「え、え?」  突然何を言い出すのか。僕は困惑して踊り子と顔を見合わせたのだった。
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