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4人の女性たちが車椅子を中心にして移動を始めた。義足の女性がビルのすぐ前の広い空間を見て言った。
「ここ、何だろう? 柵で四角に囲んであるけど」
そこはちょっとした広場と言っていい面積の一角だった。低い金属の柵がずらりと周りを囲んでいて、中には運動会や大規模イベントで使われるような大型のテントが複数設置してあった。
柵の中は通り抜けられそうにないので、柵の外周に沿って移動していると、近くのビルの陰から、二つの人影が猛然とした勢いで飛び出して来た。
その二人は後ろを振り向きながら走って来たため、華の車椅子にもろにぶつかった。車椅子が横に傾き倒れそうになり、飛び出して来た二人は足がもつれてその場に転がった。
まっすぐ横倒しになりそうな車椅子から華の右手が伸び、明らかに重力に逆らう動きで車椅子は元の位置に戻った。
地面から起き上がったのは、まだ10代半ばごろに見える二人の少女だった。首筋までのボサボサした髪を金髪に染めている、派手なピンク色の上着と革のミニスカートといういで立ちの少女が先に起き上がり、もう一人の、ベージュ色のワンピースの少女の手を引っ張って起き上がらせた。
長い黒髪を首筋の後ろでまとめているベージュ色のワンピースの少女は、立ち上がるとあわてて華たちに頭を下げた。
「すみません、お怪我はありませんか?」
金髪の少女も少し青ざめて顔で謝罪した。
「ごめんよ、おねえさんたち。実は追われててさ」
華が怪訝そうに首を傾げて訊いた。
「追われてるって、誰に?」
通りの角の向こうから男性の声が複数聞こえて来た。
「どっちへ行った?」
「その角を曲がるのが見えました」
華が車椅子の中から他の3人に目配せする。義足の女性、雪が車椅子の後ろの荷物入れから薄い毛布を取り出し、二人の少女を華の左右にしゃがみ込ませ、その上をすっぽり毛布で覆った。
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