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一行は1時間ほどホテルを探して歩き回った結果、結局元の場所に戻って来てしまった。
華の車椅子で入れるホテルは限られていた上、その条件に合う大規模なホテルはどこも満室だったからだ。
やがてさっきの二人の少女と、義足で松葉杖をついた雪がビルの入り口から外へ出て来た。雪は華の所へ来て告げる。
「ねえ様、部屋取れたよ。トリプルルームひとつ、ツインがふたつ」
華はビルを見上げながら言った。
「灯台下暗しとはこの事ね。すぐ側に高級ホテルがあったなんてね」
あの少女二人も華の車椅子の横に駆け寄って来て、一緒にビルを見上げた。
全員が、途中の階の段差の上にゴジラの頭部が飾ってあるそのビルを見上げてしばらく見入っていた。金髪の少女が心底驚いたという口調で言った。
「ウチも知らなかった。この上の階ってホテルだったのか」
黒髪の少女がかすかな苦笑を浮かべて言いにくそうに金髪の少女に言う。
「いや、メグちゃん、あちこちにホテルの案内表示あるんだけど」
華が二人の少女に向かって訊いた。
「そう言えばお互いに名前を言ってなかったですね。私は華。この子たちは、義足の子が雪、白い杖の子が月、それとそこの」
華は自分の頭を指で指しながら、見た目には何も異常がない女性の名を告げた。
「ここが子どもみたいなのが星。それであなた達の名前は? ああもちろん本名じゃなくて、呼び名でいいですよ」
金髪の少女が浮かれた口調で名乗った。
「ウチはメグって呼んで」
黒髪の少女がか細い声で名乗る。
「ええと、じゃあ、あたしはリカです。あの、本当にいいんですか? こんな高級ホテルの部屋をあたしたちの分まで払っていただいて」
華は柔らかい笑顔で答えた。
「ご遠慮なく。この街のガイド料ですよ。さあ、早くチェックインしましょう。一段と寒くなってきたことだし」
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