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同じころ、メグとリカはあてがわれたホテルの部屋の豪華さに驚いていた。リカは似た様なホテルに家族旅行で泊った事があると言い、それほど困惑していなかったが、メグはベッドの上で飛び跳ねてはしゃぎまくっていた。
メグはトイレやバスルームの扉を次々と開け放し、その度に大声でリカに言った。
「何これ? やばいじゃん。トイレの床がピカピカ! うわ、風呂がシャワーだけじゃなくて風呂桶まであんじゃん」
リカは苦笑の表情を隠しながら、メグに応えた。
「メグちゃん、声が大きいって。外に聞こえちゃうよ」
メグは気にする様子もなく、部屋の隅に駆け寄ってしげしげと、ある物を見つめた。振り返ってリカに尋ねた。
「リカ、これ何? 金庫?」
「そんな大きな貴重品入れあるわけないよ。それは冷蔵庫」
「はあ? なんでホテルの部屋の中に冷蔵庫があんだよ?」
「いやほら、冷たい飲み物とか入れるためだよ。メグはこういうホテル泊まるの初めて?」
「こういうも、そういうもねえよ。ホテルとか旅館なんか、生まれてこのかた入った事ない」
「家族旅行とかした事ないの?」
メグは軽く舌打ちして答えた。
「前に何度も話しただろ。ウチの家は貧乏なんだよ。家族で旅行なんて、夢のまた夢、そういう家だって。自慢じゃないけど、生まれてこのかた、自分ちのボロアパートと、トー横の地面の上でしか寝た事ねえよ」
交代でバスルームでシャワーを浴び、リカは部屋に備え付けのバスローブを羽織った。後からバスルームから出て来たメグが素っ裸だったので、リカはあわててバスローブを羽織らせた。
「ダメだよ、メグちゃん。女の子が裸のまま出て来たら」
「おい、これ着て大丈夫なのか? ウチ、金ねえぞ」
「これは宿泊客用の備品だからお金は取られないって」
「すげえな。前にトー横で一緒に飲んだねえちゃんが言ってたラブホとは大違いじゃん」
二つ並んだベッドに入り、二人は何となく会話を続けた。リカが心配そうな口調で言った。
「こんな贅沢させてもらって本当に大丈夫かなあ? あのおねえさんたち、お金持ちなんだろうけど、変な事が目的だったりしないかな?」
メグは寝ころんだままベッドのスプリングの効きを楽しむように体を跳ねさせながら答えた。
「みんな女なんだから、ウチらの体目当てって事はないだろ。それに4人とも障碍者ってやつ? そういう人たちだろ。やばくなったら簡単に逃げられるさ」
「ううん、そうだといいけど」
メグがいつの間にかスヤスヤと寝息を立てているのに気づき、リカはメグに布団をかけてやり、自分も部屋の灯りを消して眠りについた。
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