トー横氷河期

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 翌朝、10時過ぎになってメグとリカは建物の8階、ホテルのロビー脇のラウンジにやって来た。  奥の席でコーヒーを飲んでいる華が手を振って二人を呼んだ。落ち着きなくキョロキョロと周囲を見回しながら歩くメグを、リカがハラハラしながら後ろからメグが何かにぶつからないように気をつけながらついて来た。  華たち4人の隣のテーブルに座ったメグとリカに雪がメニューを手渡した。メグが手を顔の前で振りながら言った。 「ああ、ウチは水だけでいいよ」  リカがあわててメグに言う。 「だめだよ、リカちゃん。お店に入って何も注文しないのは」  メグはメニューをのぞき込んで頭を抱えた。 「な、何だよ、この訳の分かんない名前の飲み物は。どんな物かさっぱり分かんねえ」  リカが遠慮がちに華に訊いた。 「あの、ケーキセット頼んでいいですか?」  華は微笑みながら答える。 「ええ、何でも好きな物を頼んでいいわよ。遠慮しないで」  メグが驚いて大声を出しかけたのでリカがあわてて手でその口をふさいだ。 「は? 2千円超えてるって、ぼったくり……」 「メグちゃん、そんな事大声で言わないの」  ケーキセットが届くまでの間、メグはキョロキョロと店内を見渡し、ある事に気づいて歓声を上げた。 「わ! この店の窓の外にゴジラの頭あるじゃん。それもすぐそば」  華がコーヒーを飲みながら言った。 「ここのテラスにあるのよ。後で出てみましょう。手で触れるそうよ」  やがてケーキセットが運ばれて来て、メグはさっそくケーキにかぶりついた。リカがほんの少しジュースに口をつけて華に向き直り、遠慮がちに尋ねた。 「あの、失礼でなければ皆さんの事をお聞きしていいでしょうか?」  華が答える。 「ああ、そう言えば、詳しい自己紹介がまだだったわね。私の名前は(はな)。見ての通り全身が不自由でね、動かせるのは上半身、特に右側だけなの。体の残りの部分は程度の差はあるけど生まれつき麻痺してるの」  義足の女性が告げる。 「あたいは(ゆき)。これも見ての通り、生まれつき両脚が半分無いの」  白い杖を持った女性が言う。 「わたくしは(つき)と申します。生まれつきの全盲でして。ほら(ほし)ちゃん、ごあいさつなさい」  月の隣に座っている女性が幼児のような口調で言った。 「えとね、あたし、星。後でカイジュ見よ、カイジュ」  華がリカに言った。 「この子は体は五体満足だけど、生まれつきの重度の知的障害者なの。以前診てくださったお医者様が言うには、4歳児程度の知能指数なんですって。もう一人(そら)という名前の子がいるけど、今は事情があって一緒にいないの。機会があったら改めて紹介するわ」  
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