後編:井瀬 莉央人の主張

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■ 4 ■  大学に入り、姉の力もあるのか制服という殻から抜け出た櫂は人目を引くようになった。  オレに近寄る踏み台などではなく、オレを出汁に櫂に近付く女が増えた。  もともと櫂は恋愛に興味がなくて女の誘惑に気付かないのかと思っていたが、そうではなくて恋愛対象が女じゃないだけのようだった。  恋人というポジションになり、今まで知らなかった櫂のことが解ってオレは幸せだった。  恋人がいて、一日一日がこんなに楽しくて、明日が待ち遠しかったことがない。大体いつも憂鬱で仕方がなかった。いつ振られるのかとドキドキして、頑張っても否定されて。  それでも面倒な女と付き合えたのは、振られても受け止めてくれる櫂がそばにいてくれたからだ。 「オレ、櫂のことずっと好きだったんだ」  部屋でこっそり男同士のやり方を調べて、櫂に突っ込むことを考えればあっさりとイケた。  親友の櫂ならば、頼もしく受け止めて「仕方ねぇな、ほら来いよ」と積極的に動いてくれそうだが、恋人の櫂は恥ずかしがって布団の中に逃げるかもしれない。  ホラー映画が苦手なのに誘ってきて、毛布からこっそり覗く櫂の姿を思い出して思わずニヤけた。  そう。ニヤけてしまったのだ。  どんだけオレは櫂を好きなんだろう。いやもう好きなんてレベルじゃない。これは愛してるってやつだ。  布団に逃げてもそこから出てこさせる方法も知っている。楽しいことに弱い櫂だ。恋愛も楽しいのだと、オレとのセックスが堪らないのだと教えれば布団から出てくるようになるだろう。  想像するだけで下半身がイライラする。  早く半年経たないかなと、オレは指折りその日を待った。
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