後編:井瀬 莉央人の主張

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■ 6 ■ 「……今日、誰もいないよ」 「っ!」 「この前以上のこと、オレはしたい」 「う……」 「櫂はこれ、オレに入れたい? オレのを入れたい?」  もう少し待って発言から早一年。ちゃんと櫂に「好き」って言わせてお互いのを抜き合って二ヶ月。それから触り合いはそれなりにしてる。  オレは交際が一ヶ月以上続いたことがないから、普通どの程度でヤるのかは判らないけど、さすがにそろそろ最後まで進んでもいいのではないだろうか?  櫂のペニスをつつきながら見上げる。櫂はあわあわと池の鯉みたいに真っ赤な顔で口をパクパクさせて逃げるように俯くが、覗き込む俺の視線からは逃れられない。 「………いれてほ、しい」  蚊の鳴くような声で答えた櫂の声より、俺の心臓の音の方が五月蝿い気がした。  〜〜〜〜っ! 嬉しい嬉しい嬉しいっ!! 「うん。オレは櫂に入れたい」 「うわっ」  では早速いただきます、と櫂を押し倒す。そこでふと手を止めた。  櫂の穴は果たしてオレを受け入れられるのだろうか? 女のそれとは違うのだ。ペニスを突っ込まれるようには出来ていない。 「櫂。櫂のそこって、オレの入れても……平気?」  とてつもなく櫂の穴に突っ込んで揺さぶってアンアン言わせたいのだが、櫂が気持ちよくなければ嬉しくない。  先程とは位置が逆転し、櫂を見下ろすオレの発言に櫂の顔がさらに真っ赤になった。   「な、な、何を言って……」 「大事なことだと思う。櫂が痛かったらやだし」 「うぐっ……そ、それは、多分平気。この前お前の見て、同じくらいのやつで拡げたから」 「はっ?」  思わず今までで一番低い声が出た。 「同じやつって、なに?」  聞かなくても大人のおもちゃだってことくらいは解ってる。それしかないし。  だけどオレのために拡げてくれたのだと思っても、すごくムカつく。 「え、あ、その、ディルド……」  です。と小さく櫂の言葉が続く。 「なんで?」 「なんでって、そりゃそれしか方法ないから」 「違うよね。ここにちゃんとあるよね。櫂専用になったオレのヤツを使えばいいよね?」 「は? はぁ?? 莉央人のために準備してんのに莉央人の使うなんて本末転倒だろ??」 「オレ以外が櫂を気持ちよくしてるのムカつく。これからはオレの以外ハメないで」  なんだかんだと言い出した櫂の口をとにかくキスで塞いで、手際よく服を剥いでいく。  櫂はオレより小柄だけど、本気で抵抗すればオレより力は強い。  お互い全裸になった時には、櫂はうっとりとオレを見つめて大人しくなった。 「莉央人(りおと)って俺のこと好きすぎじゃない?」  照れ隠しのつもりか満更でもなさそうな真っ赤な顔でえへへと笑い、足をもじもじさせて櫂は大事な部分を隠そうとする。  オレは櫂の太ももに手をかけて広げるとそこに体を割り込ませた。 「好きだよ。櫂が好き、大好き。愛してる。大好き。櫂はオレのこと嫌い?」 「うっ……好きに決まってんだろ」  感情のないオレの顔でも伝わるように、念を送るように、何度も溢れる愛を櫂に伝えれば、櫂は瞳をうるうるさせてふにゃりと笑った。 「だ、だけど、莉央人。男は準備してないと出来ないから」 「うん。調べたから知ってる。道具もあるよ」 「えええ?」  もし櫂がオレを抱きたいというなら、抱かれる努力をしようと思って準備はしてある。 「使う?」    ちゅっとトマトのように真っ赤な櫂のほっぺにキスすれば、両手で顔を覆った。 「……〜〜支度してきた、し。べ、別にやましい気持ちがあったわけじゃ…っん、ぅんっ!」  据え膳食わねば男の恥と昔の人は言ったけど、腹が減ってるとこにご馳走が出てきたらそれはもう美味しくいただくに決まってる。 「……いただきます」  貪るように交わしたキスでネトネトになった唇を舐めて、オレはネットで調べた男同士のセックスの知識を総動員した。
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