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ホテルの部屋へ急ぎドアが閉まると同時に、キスを交わしながらお互いに着ていたスーツを忙しく脱いでいく。
絞めていたネクタイが上手く外れずにもたついていると、長くてキレイな指先が伸びてきて、器用にそれをほどかれた。
「だっせ……」
「うるせぇよ……」
二人で憎まれ口を叩きながらも、お互いに顔は蕩けるほどに甘くなっている。
シャツのボタンを一つ一つ外されて、露になった薄橙色の肌にそいつの手が撫でるように優しく滑っていくのを感じていた。
「んっ……」
首もとに顔を埋めて唇をあてられた瞬間に自然と声が漏れる。ぞくぞくする背中に回されている腕にどきどきが止まらない。
もっと、もっと――とねだるように男の髪に指を通せば、そのままベッドへと倒される。
覆い被さるような体勢で見つめてくるそいつの瞳には、そんなお前を見つめる俺だけが映っていて、それだけでずんっと体の中心に熱が集まっていく。
「後悔しないか?」
「しない……。俺はお前に抱かれに来たんだ……」
「なら、思う存分抱いてやる」
さっきまでの遠慮がちに触れていた感じとは違い、男の触れる感触がしっかりと伝わってくる触れ方に変わった。
執拗に体を撫で回し、指先を肌に這わせていく。ゆっくりと指先で触れられる方が気持ち良く感じてびくんと体が跳ねる。
「キスして……」
触れられるだけじゃもどかしくて、腕を掴んで懇願すれば、そのまま唇を塞がれた。
どんどんと深くなっていくキスに、腰が砕けてしまいそうな感覚に襲われる。
絡まる舌が逃げるように離れていくのを追いかけながら何度も口づけを交わす。
「はぁ……」
息継ぎを忘れるくらいに夢中になっていたせいで、解放された唇から息が漏れた。
「もう後戻りはできないからな……」
「わかってるよ」
最後の忠告だとわかっている。それでも俺はこ
の男を諦められなかった。自ら首に腕を巻き付けて唇を重ねる。
それを突っぱねることなく受け入れてくれたことに涙が出るほど嬉しくて胸がきゅっと苦しくなる。
堪えているつもりだった涙を親指で拭われて、自分が泣いていたことに気づいた。
「好き……だ」
「ああ……」
あふれでる言葉を止めることはできなくて真っ直ぐに伝えると、男はただ頷いておでこにキスを落とす。
そしてその唇が額から頬、耳朶から首筋へとおりていき、肩から胸元までやってきた。
「んっ……」
胸の突起が唇で挟まれ、ぴくんと体が反応する。唇が開かれると舌でそこが執拗に転がされ、くすぐったさにも似た感覚が広がっていく。
反対側のぷくりと膨れて主張している場所は指先で転がされていた。
「あっ、んっ……」
「感じてんの?」
「そんなの、聞かなくてもわかんだろ……?」
「まあ……こんだけ可愛く喘いてたら……」
「うっせぇ……」
こんな時にまで憎まれ口になってしまうのは、恥ずかしすぎてどうにかなりそうだから――。
そんな俺の言葉を塞ぐように唇が重なった。
そのまま男の手がすでに大きくなっている俺の中心部分を包み込むと、上下に動き始める。
「あっ……」
口の端から甘い声が漏れる。別に経験がないわけじゃない。でも、男に触れられるのは初めてだった。そして、男に触れて欲しいと思うのも初めてだった。
ちゅっと音を立てて唇が離れると、男が体を下へとずらしていき、与えられた刺激で溢れだしている先走りをぺろりと舐めとり、そこを咥え込んだ。
「んあっ……」
喉の奥の熱がペニスに伝わってくる。男が何度も喉の奥から先端までを咥えながら舌を滑らせたり、カリの部分に唇を引っ掻けたりしながら、なぞるように舌でフチをなぞっていく。
「ん、きもち……い……」
与えられる快楽に、あっという間に太股の内側が痙攣し始めていた。
それに気づいた男が、奥まで咥え込むとちゅるっと音を立てて吸い込んでくる。
「あっ、あっ……くっ……」
押し寄せてくる射精感に自然と声が漏れていた。そして、もう一度深く咥え込まれた瞬間に、
「ん、はぁっ……イクッ……」
ぶるんと大きく震えた先端から、欲望が弾けとんだ。
「ふはぁ……はぁ……はぁ……」
なかなか息が整わない。そんな俺に覆い被さるように男が体を戻してきて、顔を覗き込まれたかと思えば、優しく髪を撫でられた。
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