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「次は、おれが……」
「俺はいいから。そのかわり、覚悟しろよ……」
「うん……」
俺の返事を待ちきれずに顔が近づいてくると、唇が重なり深くなっていく。
そして、さっきイッたばかりの先端から透明の液体を指に絡めると、後ろの窪みに男の指が伸ばされ円を描くように襞をくすぐってきた。
感じたことのない感覚にふわりと腰が浮くのを感じながら、触れられるそこに全神経が集中する。
――ぷつり――
「うっ、くっ……」
「苦しいか?」
「んっ、でも……だい、じょ、ぶ……」
どうってことないっていえば嘘になる。本当は痛いし苦しい――。でも、お前と繋がりたくて――ただお前を感じたくて堪らないんだ。
指が一本、二本と増えていき、さっきまであった圧迫感が少しずつ違う感覚へと変わり始めていた。
「あっ、んっ……」
「ほらっ、聞こえるか? しっかりと感じてるってわかるだろ?」
「そ、んな……の……」
「ほらっ、ここ……もう、溢れまくってる……」
指が動く度に、ぐちゅっという艶かしい音が二人の息遣いとは違う場所から響いてくる。
「じゃあ、早く俺を抱けよ……」
「言われなくても、抱いてやる」
掻き回されていた指が中から抜けても、すぐには閉じなくてそこはヒクヒクと襞を揺らしながら男が挿いってくるのを待っている。
正常位のまま男が俺の足を開き、間に膝を立てて座るとぐっと腰を持ち上げてそっと秘部に固くなったモノをあてがってくる。
その固さと大きさに一瞬ぴくりと逃げ腰になりそうになったけれど、それを誤魔化すように男の首に腕を回した。
「挿れるぞ……」
「う、ん……」
確認するように問いかけられた言葉に頷くと、ぐぐぐっと中に異物が入り込んでくる感覚に襲われる。
「うはっ、くっ、うっ……」
「きっつ……」
苦しくて呻くような声がでてしまうけれど、男も同じように苦しそうに顔を歪めていて、愛おしく感じた俺は、男の顔を引き寄せると唇を重ねた。
ゆっくりと、でも確実に奥へと進んできているのを感じる――。
「はいった……」
「ほんと?」
「ああ……。いきなり動くと傷つけてしまうから、とりあえずしばらくこのままで……」
繋がったまま優しく耳元で伝えられておでこにキスをされる。それだけで胸がきゅっと苦しくなる。これが幸せという感覚なんだろうか?
そんな感情とはほど遠い世界で生きてきたから、もう随分とこんなふわりとした気持ちがあることを忘れていた気がする。
「お前……、名前は?」
「りょうすけ……」
「りょうすけ……俺もすきだ……」
「うん……」
たった一度会っただけの関係なのに、決して関わってはいけないはずの相手なのに、組織を裏切ってでも手に入れたいと思ってしまったのは、きっとお互い様だ。
覆い被さっていた体が一気に近づいてきて、ようやく律動が始まった。奥深くで繋がっているそこは、動く度に肌の擦れ合う音と結合部から聞こえてくる卑猥な音を鳴らしている。
「あっ、あっ、んっ……」
「くっ、はっ……」
ホテルの部屋には、俺たちの愛し合っている姿が全身で映し出されていて、それを見つけた俺はその姿を忘れないように必死で目に焼きつけようと見いっていた。
でも、いつの間にかそんな余裕なんてないくらいの快感が全身に広がって、夢中で抱かれている。
「あんたの名前は……?」
「俺は……ようへい……」
「ようへい……好きだよ……」
「俺もだ……」
動く度に与えられる快楽に自然と自分でも腰を振り始めていた。
もっと、もっと感じたい――もう二度と会うことを許されないなら壊れるほど愛し愛されたい。この繋がりを永遠にしたいとさえ思う。
最奥で体を反らしながら打ち付けられる。
「あっ、あっ、はぁっ……」
「もっと、もっと、俺を忘れられなくなるくらい全身で感じろ……」
一気に動きが加速していき、頭が真っ白になりそうなほど全身が震え出す。
くる……いく……もう、出る……
「はぁっ……あっ、おれ、もう……」
「俺も……」
その瞬間、ぐいっと体を引き寄せられ起き上がらせられると、向かい合ったままの体勢で繋がっている。
更にぐっと奥まで挿いってくる――。
「やっ……ば、も、だめっ……」
「ほらっ、もっと動けよ……」
「あっ、あっ、あっ……」
動けば動くだけこりっとしたところに当たって気持ち良さで声が漏れる。
もう、動く力さえ残っていない――。
それを察したのか、男が俺の肩をホールドすると、下から一気に突き上げてくる。
「あっ、んっ、あっ……」
「くっ、俺もイキそっ……」
「おれも……も、イクッ……んあっ……」
「うっ……イクッ、はぁ……」
びくんと体が跳ねたと同時に俺の体を器用にベッドに沈めて、男が俺の中から張りつめた棒を抜き、白濁をお腹の上に吐き出した。
その姿さえもとても美しくて目が逸らせない。
自分にはそんな余裕なんてないはずなのに、愛おしくて堪らなくて、一瞬でも見逃したくないと思ってしまう。
「これでもう、俺たちが会うことはない」
「ああ、わかっている」
「じゃあな……」
「じゃあね……」
男が背を向けて歩き出す。
そして、俺もその背中を見送ることなく背を向けると歩き出した。
住む世界の違う二人が、二人だけの秘密を抱えてそれぞれの道へと戻っていく。
これが最初で最後の恋。
きっと一生忘れない。
いつか生まれ変わったら、もう一度出会い恋をしよう。
そう胸に誓って、俺は空を見上げて笑った。
その目からは一筋の涙がぽろりと落ちた。
Fin.
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