失敗

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失敗

 僕が朝食の準備をしていると、トイレの方から生理用品のビニール袋が擦れる音が聞こえた気がした。その音は僕の中に静かな絶望を流し込む。  僕は深呼吸をした。妻の美希はもっと辛いのだ。暗くも無く、かと言って明るくも無い、フラットな自分をイメージする。いつもの朝の僕だ、そう自分に言い聞かせた。  僕は思考を隅に追いやり、食パンを2枚、トースターに入れ、フライパンを火にかけ、ハムと卵をやはり2個ずつ入れた。  僕は意識をトーストとハムエッグの焼き加減のみに集中した。その他の事に意識が向いてしまうと、叫びそうになる。  トーストとハムエッグが軽く焦げる良い香りが僕を包んだ。ここにコーヒーがあれば最高だが、そんなものを飲む訳に行かなかった。  あまり神経質になるのはいけない。それはよく分かっている。だけど、できる事はしていきたい。  トイレを流す音が聞こえ、美希が出て来た。 「駄目だったみたい。来ちゃった」とは言った。美希の声もやはりフラットに感じられた。心の中はどうなのだろう。きっと僕よりも辛いのだろう。
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