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地元の産婦人科ではホルモン療法までしか出来なかった。けれどまだ人工授精、体外受精といった治療もある。
主治医にそれらの治療を検討している旨を伝えるとすぐに紹介状を書いてくれた。けれど、主治医は言った。
「紹介状があっても診てもらえるとは限らないから急いで」と。
事実だった。
人工授精や高度不妊治療と呼ばれる体外受精を行う病院は限られていた。にも関わらず、子供を望む夫婦はいくらでもいた。
1人の医師にたくさんの夫婦が向かって行く様はたった1つの卵子に向かって行く無数の精子を思わせた。
僕たちが選んだ病院を受診するには、病院の主催する勉強会の参加が必須だった。当然だが、勉強会の参加者はひどく限られていた。紹介状があっても優先的に参加できる訳じゃない。
勉強会の参加は毎月1日の朝9時に電話でのみ受け付けていた。9時きっかりに無数の電話が病院に掛かる。そして、5分もすれば勉強会の席は無くなってしまう。
僕たち夫婦は自身のスマホはもちろん、実家や職場の電話を使って掛けまくった。
僕たち夫婦は運が良かったのだろう。数ヶ月で予約を取る事ができた。
善は急げ、と言わんばかりのスピードで治療が始まった。不妊治療は時間との戦いでもある。前の病院の紹介状の情報を元に、追加の検査を行い、治療方針が決まった。
美希の年齢を考慮し、人工授精を2回行い、妊娠に至らなければ、すぐに体外受精を行う事になった。
人工授精は10%ほど。当然、妊娠には至らなかった。
そして体外受精を行う事になった。ちなみに成功率は15%〜30%ほどだ。
僕たちは3回目を終え、失敗した
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