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絶望の朝
9ヶ月目の朝の事だった。異常を感じたのだろう。美希が僕を起こした。まだ半分、夢の中だった僕は血の気の引いた美希を見て、悪夢に入り込んだ事を悟った。
僕たちは上着だけ羽織って、産む予定の産院に向かった。ハンドルを握る僕の手は情けないぐらいに震えていた。
僕は馬鹿だった。最悪のケースを想定していたが、頭の片隅では出産が早まったのかと楽観的な期待をしていた。いや、楽観的になりたかったのだ。
後部座席からは完全に取り乱し、悲痛に満ちた声で産院に電話を掛ける美希がいたにも関わらずだ。
僕はできるだけスピードを出し、安全そうなら、ハザードランプを点けて赤信号だって渡った。
僕たちが着く頃には産院は美希の為の準備を整えてくれていた。
美希はストレッチャーに乗せられ、産院の奥に消えていった。
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