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空と海の違いは、青く棚引くかどうか、だと最近思う。青く棚引くのは勿論海の方だ。
「おいおい、空は白く棚引く、なんて言を綺麗にしようとしているんじゃないだろうな?」、と論を交えようとしている充実した遊民よ、暫し待ってほしい。
その事に関しては今、俺がこの客船の甲板で思考しているんだ。
空と云うのは本当に多彩な色を棚引かせるのだ。青、白、灰、黄、褐…様々々々だ。この前、友人が緋の空を見た、と言っていた。
棚引きは波であり、波は信号である。俺は生まれながらにして――生まれて直ぐから海派の両親の影響を受けたと云う意味だ――海の信号に魅せられた。
海の信号は順序と懐かしさを感じさせる。
「"テール"までまだ遠いんだ。あまり派手に動き回るな」
「分かったよ、親父。甲板に出るのはこれで最後にする」
ウィンドブレーカーのフードを被り、チンガードに顔を埋める。ポケットに手を入れれば寒がりな人間の完成だ。
"ヘッド"の亜熱帯の港を出て10時間、飛沫が初雪の様な海上は、かなり冷えていた。
これは、俺がテールに到着するまでの船旅だ。
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