Fin.Land

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 夕食。個人的には一番好きな食事だ。  ケプルスに乗ればもっと好きになるだろう。  ビュッフェ形式、高級な料理は無いが、品数は旅人に圧巻を言わせる。何か食べれば腹は重くなり、心は軽くなる。身分問わず舌鼓を打ち、クルーズ中最高の交流の場になる。  「ハンバーグにトマトサラダ、ポットスープ…丸を多用しすぎじゃない?」  年甲斐もなくトレイにオムレツと寿司とカツレツを並べた父が話し掛けてくる。  「ヘッドの食材使用、って云う表示があるのを選んだだけ。こう、さ、何度もヘッドとテールを行き来しているからさ、偶に自分がどっちの島にいるのか分からなくなるんだ。親父はならない?」  自分のトレイを見ると、確かに丸ばかりだった。ヘッドは丸みを帯びた島なので、穫れる食材も形が似るのだろう。  黄色い丸もあった。卵料理を取った覚えは無いのに、不思議だ。  視点を動かすと、先程よりも大きい丸があった。バクテリアの様な感じに飛沫が散っていた。  「親父、オムレツ零してねぇか?」、そう言おうとした、と云うよりそう言った気になっていた。  俺の口から出ていたのは無色透明な言葉ではなく、黄金色の吐瀉物だった。オムレツより熱い温度の中に、トマトのヘタが浮いていた。
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