Fin.Land

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 「何だこれ?誰の吐瀉物だよ!俺が驚いているのは、これが俺の吐瀉物じゃないって事だ!単に戻しただけじゃ、俺はそうそう驚かない。まず、第一に、こんな色の料理は口にしていない。トマトだってヘタを取った状態で、ビュッフェの席に座っていた。更に、最も恐ろしいのは、吐いた事に気が付かなかった事だ!喉の真ん中で感じる厭らしい熱が起こらなかったんだ。気付いた事としては、その熱が無い方が、嘔吐と云う行為は気持ち悪くなると云う事だ!」  「途轍もなく分かり易い実況見分だな」  親父はやっとカツレツを切り分ける手を止めた。  「後はスタッフが片付けてくれるそうだ」  その後の親父の行動は速かった。エチケット袋を用意し、トイレまでエスコートしてくれた。  今になって羞恥の熱が喉元を伝って大脳新皮質を刺激した。  病気なのかもしれない。病的な呪いを、俺は預かったのかもしれない。まあ、不治の病じゃなければ良いんじゃないかな、と。海の様に漠然と構えるしかないのだ。  「失礼します」  クルーズドクターが部屋を訪れた。
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