Fin.Land

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 「追跡、ってのは、対象の後ろをトコトコついて行く事じゃない」  後ろの後輩は無言で鉛筆を動かす。彼にとって無言は肯定、了承の証だ。最近やっと分かってきた。  「追跡の必要事項は三つ。まず、相手の行動を読む事。純粋な追いかけっこはクソガキにもできる。右、左、と足を前に動かせば、誰にだってできる事だ。追跡はそう甘くない」  ビットを踏みつけると、乗っていた吸い殻が崩れ、蜃気楼が揺れた。  「二つ目、追う側が逃げてはいけない。戦略的撤退とか言う奴から潰れていく。漢字を並べれば格好良いと思っている中坊でも理解できる事実だ。そして最後!追跡とは、結末を生むために存在する!バッドエンドでも、メリーバッドエンドでも!!さあ、見てろ、良い例を今から見せてやる」  行動は大胆、劇的に。ターゲットがこちらに向かって来ているのだから。  冷静な時間は鳥打ち帽を深く被るまでだ。  確か奴は、メインターゲットの息子だ。名前は確かハーフ樺ー、と云ったか。ああ、そうだ。ハーフ樺ー。十六歳。血液型は検査してもらった事が無いが、両親共にA型なので彼もA型……。  情報がすぐにフィードバッグされる。良いぞ!寄木細工の秘密箱の最初の取っ掛かりを見つけた時くらい、爽快な気分だ!  移動の美意識が生まれると、カウンターとして追跡の美意識も生まれる。  ここは俺の殺人の美意識を立たせてもらおう。  俺は拳に力を込めると、ハーフ樺ーのにズブリ、と突き刺した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加