5人が本棚に入れています
本棚に追加
原因
Y君から借りた教科書にはY君自身が書いた答案があった。
しかしそれを採点してみると、全て間違っていた。
このことを自分自身の頭で考えると、考えると共にわからなくなっていく感覚がある。
そこから三日間ぐらい、本当にそのことで頭がいっぱいになり、宿題どころではなくなってしまった。
しかし時間も時間なので、適当に回答を埋めてY君の家に返しにいく。
もう季節は夏ではなくなり、秋めいて涼しくなってきていた。
インターホンを鳴らすと、Y君のお母さんが出る。僕はお母さんに用件を伝えると、ニコニコしながら、
「どうぞお入りなさい」と言い、入らせてくれた。
母から聞かされた”Y君のお母さん”の印象が消えていくような、純粋な笑顔だった。
三日前に教科書を借りにきたときはY君が玄関まで来てくれたので家には入らなかったのだ。多分、これがちゃんとY君の家に入る初めての日なんだなと思った。仲が良かったので、変な感覚だった。
渡り廊下を歩いた先の右に渡ったところが、Y君の部屋だった。
Y君は僕を見て、「やあ」と言いながら弱そうに笑い、部屋に入らせてくれた。
Y君「ここは二人にして」
お母さん「はいはい」
お母さんは「ごゆっくり」と言いながら、ドアを閉める。
Y君の部屋は、広かった。多分今思うと僕の部屋の2倍はあったんじゃないかと考え始めた。
しかし、Y君の部屋の壁は、傷だらけだった。
最初のコメントを投稿しよう!