罪悪感

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罪悪感

 家族の事情…この言葉をヒントにして意味を理解するにはどうするか。  家に帰ってそのことをリビングで考える。考える、と言っておきながら、テレビに半分耳を傾けていた。  テーマはジャーナリストたちが”子供への教育”を話し合うというものだった。ある人がこういった。 「男性でも女性でもいるんですけど…友達とかに子供の学力とかを自慢する人がよくいるんですよね。でも理想通りに子供も成長させなきゃいけないから、パニックになったりとか急いだりしてトラブルになったり、DVの元になったりするんですよ」  今思ったこと。まさかと思った。  Y君の行動が当てはまっていく。怖いぐらいに根拠に結びついていく。  もう真相はわかった。  ”その人”とは…”Y君のお母さん”だったのだ。  母の言葉も鍵となった。  Y君のお母さんは他の人たちによく自慢をしていた。  その分、Y君の学力を上げようとして、追い詰める。  そして、Y君にストレスが徐々に溜まっていき、勉強にも影響を与え始めた。お母さんが気づいていないだけで、暴力的にもなっていった…。  いやまさか…。    Y君が転校する理由ってもしかして…。    罪悪感が込み上げる。  なぜお前が罪悪感を感じるのか意味がわからないと思う人もいるかもしれない。  僕はあの日、Y君の家へ教科書を返しに行った。  Y君に手紙をもらった日だ。たしか、手紙をもらった時に僕が大きな声で 「ここで話せばいいじゃないか」と言ったのだ。  手紙をもらった後、Y君の部屋からかなり近距離の地点にお母さんは立っていた。ニコニコしていたのは、自分が会話を聞いていたことをよその子にわからせないように誤魔化していたのではないか。  記憶が蘇る。Y君の部屋をお母さんが出ていく時、足音が聞こえなかったのだ。  僕に渡した手紙の意味が不十分であるのも、具体的に書ける時間がなかったのではないか。なぜか。お母さんが監視しているから。  そして、家に向かうところを後ろからずっと見ていたのも、Y君にこれからする行動を人から見られないようにしたのではないか。  ”これからする行動”、とはなんなのか。    自分の母に知られないように友達に伝えようとしていたことを強引に聞き出すこと。  Y君はとうとう母親に本当のことを話してしまい、自分の考えに水を刺されることを恐れこの学校を出ることによって母親はそれを免れようとした。そしてY君は仲が良かった僕に最後の希望としてSOSを伝えていた…。  Y君に会える日は、1日だけあった。  明日…金曜日が本当に最後の日だ。  僕がY君を助けられるのは、この1日だけだ。    
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