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友人
もう、あれは30年前のことだ。
僕は当時14歳で、公立の中学に通っていた。
1993年の9月14日だと思う(日記を見て確認)。僕がいつも通り家に帰って宿題をしようとすると、数学の教科書を忘れたことに気づいた。解答解説は別にあったから、教科書だけを誰かに借りようと思っていた時、親しかったY君が思い浮かんだ。
Y君とは1年生の頃から同じクラスで、好きな漫画が共通していたこともあり、すぐ打ち解けることができた奴だ。
すぐさま電話を掛け、Y君に教科書を借りる許可を得、家に行くことを告げると、Y君の家へ向かった。
Y君と違うところを絞って言うと、金と頭だ。
Y君の家はお金持ちで、いわば”お屋敷”という場所に住んでいる。お父さんがソフトウェア開発の社長だからだ。前にY君にそのことを指摘すると、そこまで嬉しそうな顔はしていなかったのが印象的だった。
Y君のお母さんは英才教育を特に力を入れており、噂によれば、生後5ヶ月ぐらいから英語の絵本を読ませ、小学3年生の時点で数学が中二のレベルまで追いついていたという。今の僕の学力とY君が同じだった時期が9歳の頃という訳である。
なので、Y君はいつも学年テストで学年1位。
一つ不思議な点と言えば、勉強や学力のことをどんなに言われたり褒められたりしても、不安なオーラを出していたところである。誰だって学力を自慢するものだと僕は思ってきたからだ。
しかしお母さんはその正反対。
自分の息子のことの成績のことなどをいつも自慢しているのが鼻につく、と母が愚痴にしていることがよくあった。
そしてY君の家へ着き、教科書を貸してもらい、「明後日には返すから」と言って帰る。
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