君の舌に触れるもの

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「いいよ。おいで」 「さすが、学習能力高いな」 「そりゃ、甘やかしてくれって言ってる恋人が喜ぶことなんだから。覚えるよ」  東雲は嬉しそうに笑いながら俺の腕の中に潜り込み、鼻先を胸元に押し付けた。 「大丈夫?」 「大丈夫。匂い嗅いでるだけ」 「そっか。眠れそう?」 「うん。葛原は?」 「寝れるよ。暑くない?」 「暑くない。むしろ心地いい。もう、疲れた。おやすみ」 「うん、おやすみ」  相変わらずマイペースな東雲の頭を撫で、俺も続いて目を瞑った。今まで緊張していたはずの東雲の体温が、とても心地よく感じた。  きっと、俺はまだ東雲の知らないところが沢山あるだろう。過去にそんなことがあり、トラウマがあったことなんて欠片も気づかなかった。もしかしたら、無意識にまた傷つけてしまうかもしれない。  それでも、物が触れることが苦手な東雲の舌に、俺は触れることを許された。俺の匂い好きだと言って、悪夢からも解放した。これからも東雲を癒し、東雲の五感全てに俺を刻み付けたい。  そしていつか、全てを俺に支配され、思い出すのは俺が刻んだ感覚であってほしい。望み通りに、ドロドロに甘やかしてあげるから。
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