君の舌に触れるもの

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 ご飯を食べ終えれば風呂に入り、俺の部屋の床に敷かれた布団で漫画を読みふけ、読み疲れれば枕元に漫画を置き、眠気に身を任せるように目を瞑る。マイペースな東雲の様子を察し、俺は電気を消してベッドに潜り込んだ。  東雲とは気を遣わなくていいし、マイペースで自由な性格は一緒にいてとても楽で、一番仲がいい相手でもある。  しかし、そんな東雲に一つだけ困っていることがある。それが起こるのは、必ず闇の濃い深夜。皆が寝静まった時間だ。  眠りに落ちてからどれほど経ったか、俺はベッドが揺れる感覚で目が覚めた。 「東雲?」 「あ、起きた。隣、入れてよ」  背後に感じた気配に寝返りを打とうとすれば、既に半分身を潜り込ませていた東雲と体がぶつかった。 「なんでだよ。ジャンケンで負けただろ」 「嫌な夢を見たんだ。いいだろ」  そう言って俺の体を押すので、仕方なく東雲が入るスペースを空けてやり、背中を向けて横になる。シングルベッドに男二人というのはかなり狭く、密着度も高い。背中に感じる東雲の温もりに、目がどんどん冴えていく。  布団かベッド、どちらで寝るかはジャンケンで公平に決めている。しかし、東雲は時に俺が寝ている隣に潜り込んでくる。それは決まって俺がベッドで寝ている時であり、嫌な夢を見たと言って押してでも入り込むのだ。俺はそれにとても困っている。
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