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今日はいい天気だ。
朝日が海を照らし、エメラルドグリーンが透明度を増した。
潮風が涼しく吹き抜ける。
集合場所の公園には、いつもの通り、自分、ゆかりさん、ゆかりさんの息子の隆志くん、そしてやっさんというメンバーが集まった。
他にも何人か近所の人がいるけれど、いつも来るのはこのメンバーだ。
四人で何気ない会話をしながら、翡翠海岸まで歩いてくると二人の人影を見つける。
彼らは例にも漏れずに、カメラで撮影をしていた。
「また動画配信者いる。最近多くない?」
心底嫌そうにそう言った。
ああいう自分の頭で考えることをせずに、二番煎じ、三番煎いや、千番煎じのようなことをする奴らが嫌いだった。
ところが、隆志くんは目を輝かせて彼らに熱視線を送った。
「僕も配信やりたい。石の蘊蓄を語りた」
ゆかりさんはすかさず反応する。
「絶対ダメ」
隆志くんは面白くない表情を浮かべ、また熱視線を送る。まだ小学校五年生だから、動画配信者は憧れの職業なのだろう。
やっさんは豪快に笑った、
「でも、ありがたいよ。ご飯食べて、ホテル泊まって、お土産買ってってくれるし」
やっさんはこの地区の名士で、ホテルやら道の駅やら、居酒屋やらを経営している。
市長選にと押す声もあったらしいが、奥さんの反対により無かったことにされた。
まぁ、確かにやっさんの言う通りだ。彼らみたいな人がここ糸魚川を支えてくれている。
ゆかりさんは二人を見つめる。
「二人ともなかなかのイケメン」
さすがにそれには反論した。
「どこが?調子乗って沖までいって溺れそうな顔してる」
彼らを怪訝な表情で睨みつけた。自分で自分を調整できそうにない、そんな気がする。
やっさんが年長者らしく、こう言った。
「いい大人なんだから、そこまで馬鹿じゃないでしょ。俺たちも探そう」
そこ一言で、私とゆかりさんと隆志くんは、浜辺で翡翠を拾い始める。
やっさんは、長い柄のついた網で石をすくい始めた。
そう、さすがに彼らだってそこまで馬鹿じゃない。
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