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ここには億千万の石が転がっている。少しだけ激しい波が永遠に石を運んでくるのだ。
けれども、どれだけ探しても、緑色の翡翠は見つからない。
拾った白色の石を沖に向かって投げると、ポチャと激しい音がして沈んでいく。
そして、体は異変を感じていた。
水温が冷たくて、全身に鳥肌が立ち始めている。
けれども、カメラを持った田中は、こう叫んだ。
「光一、宝物は深海にある。お前は、本物のトレジャーハンターだ!」
そう、俺はトレジャーハンターになるべく生まれてきた男。
「よっしゃ!俺はトレジャーハンター!」
そう叫ぶと勇敢にも奥に進んでいく。
しかし、後ろを振り向いた瞬間、目を疑った。
俺の背を越える高い波が襲いかかってこようとしていたのだ。
大自然の前に俺は無力だった。
いとも簡単に大波にのまれてしまう。
俺はまだ死にたくない。
「助けて」
ようやく事態を飲み込んだ和也がカメラを砂浜に置き、助けようとするが、助けられない。
そういえば、俺も和也も水泳が大の苦手だった。
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