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連日の晴天続きのおかげか、翡翠は全くと言っていいほどない。
翡翠は山から川に流されて海にやってくる。なので、天気が崩れたら崩れるほど水の流れが強くなり、波が高くなり海に打ち上げられるのだ。
そういえばあの動画配信者たちは翡翠を拾えたのだろうか?
そう思い振り向くと、二人いたはずなのに一人しかいない。そして何やら酷く慌てている。
視線の先を追うと一人が波にのまれて溺れていた。
「溺れてる!」
大声で叫ぶと、みんなも気がついてくれた。全力で走って行くと、一人の若い男が涙を流しながら「ぼく泳げないんです」と叫んだ。
だったら、むやみに海に入るな。
怒りを抑えながらも、なんとか助けなくてはならない、そう思った。
かという私も小学校の時、スイミングに行っていた程度で秀でて泳げるというわけじゃない。
辺りを見渡すと二リットルペットボトルが流れ着いている。
サンダルを脱ぎ捨て、ペットボトルを持ち海へ入ろうとした私をやっさんは制した。
「俺は高校時代競泳部だからよ」
やっさんは上着を脱ぐとペットボトルを持ち海に入り、華麗に男の肩を支えた。
というか、よくよく見るとまだそこ、足がつく所だ。やっさんは溺れている男の肩を支えながら浜に上がって来た。
その場にいた全員で浜に引き上げられた男に声をかけるが、起き上がらない。もう一人の男が「光一、死なないでくれよ」と泣き縋っている。
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