1.翡翠との出会い

22/41
前へ
/117ページ
次へ
お父さんが、今日は珍しく早く帰ってきたから、家族そろって夕食を食べている。 真珠が目をまひらいた。目はキラキラと輝いている。 「じゃあ、東京の社長の息子が翡翠拾う為に引っ越してきたの?やばいじゃん」 「でも、横領の罪なすりつけられて、勘当されたんだって」 「なんだ、じゃあ興味ない」 真珠は途端に目の輝きを失い、味噌汁を飲み始めた。 「もう、何かね。宇宙人と話してるみたい。お金ないのに働きたくないとか、トレジャーハンターになるとか」 お母さんは一番思い出したくないことを、言う。 「翡翠も中学校までトレジャーハンターになるって言ってたじゃない」 黒歴史をほじくりかえされ、穴があったら入って冬眠したい。 真珠は手を叩いて爆笑している。 お父さんがぼそっとつぶやく。 「サイダーって結構な不動産大手だぞ」 真珠はまた余計なことを思い出す。 「お姉ちゃん、東京にいた頃、社長の息子とか大好物だったじゃん」 お父さんはご飯をむせた。そう、あの頃の私は恋も仕事も全力投球していた。あの男がいうように、私は強欲だったのだ。今じゃ望むことすら許されていないのだが。 「まだ元気だった頃の話だから!私が好きなのは事業拡大能力がある人。ああゆう、会社潰しちゃう系2代目は眼中になし!」 お父さんはまたご飯をむせた。 すると私のスマホが鳴り、画面を見ると「岩田光一」と表示されていた。 うわっ、最悪。何?何の用?
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加