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お父さんが、今日は珍しく早く帰ってきたから、家族そろって夕食を食べている。
真珠が目をまひらいた。目はキラキラと輝いている。
「じゃあ、東京の社長の息子が翡翠拾う為に引っ越してきたの?やばいじゃん」
「でも、横領の罪なすりつけられて、勘当されたんだって」
「なんだ、じゃあ興味ない」
真珠は途端に目の輝きを失い、味噌汁を飲み始めた。
「もう、何かね。宇宙人と話してるみたい。お金ないのに働きたくないとか、トレジャーハンターになるとか」
お母さんは一番思い出したくないことを、言う。
「翡翠も中学校までトレジャーハンターになるって言ってたじゃない」
黒歴史をほじくりかえされ、穴があったら入って冬眠したい。
真珠は手を叩いて爆笑している。
お父さんがぼそっとつぶやく。
「サイダーって結構な不動産大手だぞ」
真珠はまた余計なことを思い出す。
「お姉ちゃん、東京にいた頃、社長の息子とか大好物だったじゃん」
お父さんはご飯をむせた。そう、あの頃の私は恋も仕事も全力投球していた。あの男がいうように、私は強欲だったのだ。今じゃ望むことすら許されていないのだが。
「まだ元気だった頃の話だから!私が好きなのは事業拡大能力がある人。ああゆう、会社潰しちゃう系2代目は眼中になし!」
お父さんはまたご飯をむせた。
すると私のスマホが鳴り、画面を見ると「岩田光一」と表示されていた。
うわっ、最悪。何?何の用?
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