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俺が働くことになった食堂は、おしゃれな若者が集まる海辺の食堂のイメージとは正反対の職場だった。
築20年ぐらいは経っていそうだし、磯の匂いがただよっているし、何より道の駅翡翠と書かれた看板が達筆すぎて、ノスタルジックな昭和を感じる。
店内は、50席ほどありそうなだだっ広い空間で隣に土産物屋が併設されている。
まさしくおばさんたちがバスツアーで寄る休憩所だった。
店長である恰幅のいい中年男性が俺の隣に立ち、節子と名札のついたおばちゃんと、坊主頭 で目つきの悪い瑠偉と書かれた明らかに元ヤンの男が向かいあい、厨房の前に立っている。
やっさんが俺のことを紹介してくれていた。
「今日から、働いてもらうことになった光一君です。今まで働いたことないから、失敗ばっかりだと思うけど、頼むよ」
やっさんは、忙しなく店を出ていく。色々と忙しい人らしい。
店長は俺を見てニカっと笑った。
「じゃあ、光一。このどんぶり運べ」
超巨大どんぶり二つを手に持つが、バランスが取れずにどんぶりは俺の手を滑り落ちた。
そして無惨にも割れてしまった。
「お前、何やってんだよ!」
店長が腕組みして俺を睨んだ。元ヤン男が呆れ果てた表情でほうきを持って来る。
やばい、俺が無能なことが早速ばれてしまった。
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