1.翡翠との出会い

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職場の先輩方である、武子さん、雅子さん、涼子さんと食堂、大漁の方をチラチラ見ている。 「あれが噂の光一くん」 「かわいくていいじゃない」 ああいうタイプって五十代以上からモテるよね。母性本能をくすぐるのか?とにかく真実を教えてあげよう。 「それが、めっちゃやばいんですよ。金  持ちのバカ息子で洗濯機も掃除機もコンロ  も使えなくて」 「かわいい」 思いもよらぬ反応に戸惑った。何もできないのもまた魅力の一つになりうるらしい。 私たちは台車を押しながら、食堂の中をのぞき込んだ。 予想通りにあいつは失敗して、お客さんに怒られていた。 「注文したのは、魚介カレー!醤油ラーメンじゃねぇ」 「ごめんなさい」 店長が厨房から苦々しく睨んでいる。 見た目は怖いが、心は優しきるい君が小走りでやって来る。 「今すぐ魚介カレーお持ちします」 私たちは、ため息をつく。 さすがに、もう何時間か経つと仕事になれるだろう。そう信じた私たちは、二時間後、再び 台車にごみを載せて通りかかり、店内を覗き込む。     光一さんは、レジをしている。 「おつり5千円少ないんだけど!」 店長が飛んでくる。 「お客様、大変申し訳ありません。謝れ」 光一さんは悲しそうに謝っている。 「すいませんでした」 私たちは顔を見合わせる。 本当に何にもやったことないんだ。
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