1.翡翠との出会い

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早朝の糸魚川駅はひとっこ一人いない。まぁ、昼間でもあんまりいないけれど。 朝日に照らされた糸魚川駅を足早に通り過ぎる。家からここまで15分、ようやく額に汗がにじむ。 もっと汗をかきたい。 スピードをさっきよりも上げると、海沿いの道路が近づいてくる。 ようやく海沿いの道路と出会うと、海からの潮風が私を通り抜けていった。 立ち止まり海を眺めると、朝日が穏やかな海面に反射し、エメラルドグリーンの水が宝石のように光っている。 オアフ島顔負けの綺麗さ。 スマホで写真を撮り、また歩き出す。 30分間の後に、汗を拭いながら家に帰ってくると、スーツ姿の父親と真珠が並んでパンとサラダと目玉焼きを食べていた。 エプロン姿の母が、コップに牛乳を注いでいる。 私の姿を見た母は怪訝な表情になった。 「またウォーキングしてきたの?」 「朝は調子いいから」 「こういう時だからこそ、ゆっくりすればいいのに」 母のあっけらかんとした言葉にお父さんは、大きく何度も頷く。 いや、私だってわかってるんだよ。 でも、何かせずにはいられないんだよ。 気まずく机の上の牛乳を飲み干す。 「着替えてくるね」   そう、言い残すとリビングを出て、階段を上って自室に向かう。 二年前までは自立した大人だったのに、今は子供部屋にやっかいになっている。 こんな自分が嫌いだ。 ため息混じりに可愛いキャラクターが描かれた学習デスクに座り、スマホを取り出した。 さっき撮った海の写真に「久しぶりの休暇、オアフの海」とコメントをつけ投稿する。 わかってる、こんなこと馬鹿げたことだって。よくよくわかってる。 けれど、スマホの中だけは、二年前までの自分でいさせてほしい。 すると「憧れます」「素敵」「羨ましい」と次々と返信がつく。 すぐにスマホをポケットにしまうと、机に顔を伏せた。 私には無くしたものが沢山ある。 大きく息を吐いた。
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