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疲れ果ててソファに寝転がる。
仕事って疲れるし、きつい。
でもヒスイのために働かなければならぬ。
机の上に手を伸ばしヒスイを握った。
冷たくて重いこの感触、心が満たされていく。
そして次に頭に思い浮かぶのは甘いものばかりだった。
クレープ、キャラメルフラペチーノ、抹茶ラテ、チョコ
飽きるほどスイーツを食べていた。
寧ろ食事の代わりに食べていたこともあった。
なのにここ2日ほど食べられていない。
「あー疲れた体にはチョコだよな」
思わず起き上がり、財布を覗くが531円しかない。
「これを……使うか、使わないか……」
そっと目を閉じる。
使ってはいけない。
「ありがとうございました」
店員がやけに明るい声で俺を送り出す。
サイダーを右手、生チョコ石畳を左手に持っている。
よしっ、決めた。
翡翠海岸で海を眺めながら食べよう。
九月の夜は最高だ。汗をかかずに暗闇を堪能できる。この町は夜は街灯ぐらいしか灯りがなくて夜空が綺麗だった。
穏やかな潮風が頬をゆらす。
翡翠海岸に差し掛かった時、見覚えのある人影がベンチに座っていることに気づいた。
翡翠だ。
夜まで探しにきてんのかよ、本当に強欲なやつだな。
翡翠に近づくとあいつは、慌ててスマホを仕舞う。
「お金ないんじゃないの?なんでサイダー飲んでチョコ食べてんの?」
少し間を空けて翡翠の隣に座る。
「残金が23円しかない。給料日が12日だから、一か月23円生活」
「明日からどうすんの?」
「トレジャーハンターになるから大丈夫」
「そう簡単になれるわけないじゃん」
俺は余裕の表情で微笑む。
「仮になれたとして、年取ったらどうするの?病気で体動かなくなったら?」
心配なんかしても何にも出てこないのに、こいつは心配しすぎだろ。
「昔、母ちゃんに言われたんだ」
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