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光一さんのお母さんと自分が重なってしまった。
そう、私は今は生きている。
何の苦労も知らないおバカ二代目だと決めつけていたけれど、どんな人だって苦しみを抱えながら生きている。
暗闇の中、街灯に照らされた光一さんを見つめた。
光一さんはニヤッと笑った。
「だから、俺は今からトレハンする」
「トレハン?あぁトレジャーハンティングのこと?」
「違う、とれたら半端なく嬉しい物探しのことだ」
「最終的には合ってる」
苦笑いするが、光一さんはしゃがんでヒスイを探し始める。
意外とこんな時の方がいいやつみつかったりするもんね。
そう思い、隣にしゃがんで探す。
光一さんは嬉しそうに白い石を手に持った。
「これは?」
「それは、曹長岩」
光一さんはすぐに違う白い石を手にとる。
「それは……翡翠っぽいけど……翡翠だ」
「やったぜ、2個目ゲット。初めての白翡翠。これは何万ぐらい?」
少し困る、確かああいうの、駅前で二つ百円で観光客用に売られてた気がする。そしてあんまり売れてない。
「それ、50円ぐらいかな?」
「50円!?うそだろ?」
「前のあれは奇跡なんだよ」
光一さんはわかりやすく落ち込んでいる。そんな簡単に宝物が見つかるわけないでしょうが。
「でもこれだって値段は安いけどさ、ちょっと見てて」
スマホを取り出し、ライトでヒスイを照らすと光りが透過し、暗闇にぼやっと浮かぶ。
綺麗、翡翠の夜の魅力だ。
「綺麗でしょ?翡翠は光を通すんだよ」
光一さんは大きく頷き、二人でヒスイに見惚れた。
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